リビングからスマホをなくしてみたら、家族や友人との時間が心満たされるものになった話
スマホは私たちの生活に欠かせないものとなりました。瞬時に情報が得られ、離れていても大切な人と繋がれる便利なツールです。しかし、気づけばリビングで過ごす時間も、つい手元のスマホに夢中になってしまい、家族との会話が減ってしまったり、遊びに来た友人との会話中も通知が気になったりすることはございませんでしょうか。かつては家族団らんの中心だったリビングが、それぞれがスマホを見つめる場になってしまい、どこか寂しさを感じていらっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。
特に私たち世代は、子育てが一段落したり、仕事と家庭の両立の中で自分自身の時間を持つ難しさを感じたりする中で、ついつい手軽なスマホに逃避してしまうこともあるかもしれません。そして、それが身近な人との関係を、少しずつ希薄にしているのではないかと漠然とした不安を抱えている方も少なくないように感じます。
デジタルデトックスに関心はあるけれど、一度挑戦してみたけどうまくいかなかった、完全にスマホを手放すのは現実的ではないと感じている方へ、今回は「リビングでのスマホ利用を少しだけ見直す」という、無理なく始められる小さな一歩が、どのように日々の生活や人間関係に心地よい変化をもたらしたのか、一つの体験談をご紹介したいと思います。
リビングでの「ながらスマホ」が教えてくれたこと
私の友人のAさんは、まさにそのような悩みを抱えていました。パートから帰宅後、夕食の準備をしながら、あるいは食後に、テレビを見ながら、つい手元のスマホを見てしまうのが習慣になっていたそうです。LINEの返信、ネットサーフィン、SNSのチェック。気づけば1時間、2時間とあっという間に過ぎてしまいます。
すぐ横に家族がいても、それぞれがスマホを見ている時間が増え、会話が「ねえ、これ知ってる?」とスマホ画面を見せ合うだけになったり、「後で話そう」と先延ばしになったりすることが増えたと言います。以前は、リビングで今日あった出来事を話したり、一緒に笑ったりする時間が自然とあったのに、それが減ってしまったことに寂しさを感じていたそうです。
また、親しい友人が自宅に遊びに来てくれた時も、ついスマホが視界に入ると通知を確認してしまったり、話の途中で「ちょっと待って」とスマホを操作してしまったり。「目の前に大切な人がいるのに、私は何をしているんだろう」と自己嫌悪に陥ることもあったと言います。
デジタルデトックスを試みようと、寝室にスマホを持ち込まないなどいくつかのルールを設けたこともあったそうですが、なかなか習慣にならず、挫折してしまった経験もあったそうです。完璧にやろうとすると息苦しくなり、結局元に戻ってしまうことを繰り返していました。
無理なく始める「リビングからスマホをなくす」小さな一歩
そんなAさんが次に試みたのは、「リビングでのスマホ利用を減らす」という、よりピンポイントで緩やかな方法でした。完全にリビングに持ち込まないのではなく、まずは「食事中はテーブルの上に置かない」ことから始めたそうです。
最初は、少し離れた棚の上に置くだけでも、通知が鳴ると気になったと言います。しかし、数日続けるうちに、食事の味や目の前にいる家族の表情に意識が向くようになったそうです。自然と「今日学校でね」「仕事でこんなことがあってね」と、スマホに遮られることなく会話が弾むようになりました。
次に、「テレビを見るときは手元に置かない」というルールを追加しました。これまではテレビを見ながら、またはCM中にスマホを見ていましたが、それをやめてみました。すると、ドラマの内容に集中できたり、家族と一緒にテレビについて話したりする時間が増えました。
さらに、「特定の時間帯(例えば夕食後から寝るまでの2時間など)は、リビングでは緊急時以外はスマホを使わない」というルールを試みました。最初は「見たい情報があるのに」と落ち着かないこともあったそうですが、その代わりにリビングにある本を読んだり、家族とトランプをしたり、一緒に簡単な作業(洗濯物をたたむなど)をしながら話をしたりする時間が増えました。
Aさんは言います。「完璧にやろうとしなくていい、というのが自分には合っていました。まずは『食事中だけ』と決めて、それができたら次に『テレビを見るとき』と、少しずつ、できることから増やしていったのが良かったんです。できなかった日があっても、『まあいいか』と次の日からまたやればいい、と気楽に考えたのも続けられた理由だと思います。」
リビングでの変化がもたらした、心地よい人間関係
リビングでのスマホ利用を少しずつ減らしていく中で、Aさんの人間関係にはいくつかの嬉しい変化があったそうです。
まず、家族との会話が圧倒的に増え、その質も変わりました。「ながらスマホ」をしていた頃は、会話が途切れ途切れになったり、お互いの話を聞き流してしまったりすることもあったそうですが、目の前の相手に集中するようになったことで、お互いの気持ちや考えを深く理解できるようになりました。特に、思春期のお子さんとの会話が以前より増え、本音で話せる時間を持てるようになったことは、何よりも嬉しかったと言います。
次に、自宅に友人が遊びに来てくれた時のことです。以前のようにスマホを気にすることがなくなり、友人との会話に心から集中できるようになりました。目の前の友人の表情をしっかり見て、相槌を打ち、共感する。たったそれだけのことですが、友人からは「Aと話していると、すごく落ち着くね」「私の話をちゃんと聞いてくれてるのが分かる」と言われるようになったそうです。スマホがないことで、友人との間に流れる時間がゆったりと感じられ、会話も途切れずに心地よく続いたと言います。
そして、最も大きな変化は、Aさん自身の心の変化でした。スマホを「見なければ」という焦りや、「何か面白い情報があるかも」という探求心から解放され、目の前の時間や空間、そして「人」に意識を向けられるようになったことです。それは、自分自身と向き合う静かな時間でもあり、家族や友人といった身近な存在の温かさを改めて感じられる時間でもありました。
Aさんは「スマホを手放すことで、失うものがあると思っていましたが、実際は大切なもの、つまり『人と心を通わせる豊かな時間』を取り戻すことができたと感じています」と話していました。
無理なく続けるための小さなヒント
Aさんの体験談から学べるのは、デジタルデトックスは「完璧に断つ」ことだけが全てではないということです。私たち世代が無理なく、そして持続的にデジタルと良い距離を保つためには、いくつかの工夫が役立ちます。
- 「場所」や「時間」で区切る: いきなり全てをやめるのではなく、「リビングでは」「食事中だけ」「夜〇時以降は」など、特定の場所や時間帯を決めてスマホから距離を置くことから始めてみましょう。
- 「代替行動」を見つける: スマホを見ていた時間で何をするか、事前に考えておくと良いでしょう。読書、書き物、軽いストレッチ、家族や友人との会話、趣味の時間など、スマホを使わない楽しい時間で埋めることが継続の鍵となります。
- 「見える化」する: リビングにスマホの「定位置」を作らない工夫をするのも効果的です。充電器をリビング以外の場所に置いたり、一時的に別の部屋に置くルールを作ったりするのも良いでしょう。物理的な距離を作ることで、無意識に手に取るのを防ぐことができます。
- 「小さな成功」を意識する: 「今日は食事中、スマホを見なかった」「夜の〇時以降、リビングでスマホを使わずに済んだ」など、小さな成功を意識して自分を褒めてあげましょう。継続できなかった日があっても、自分を責めずに「また明日から頑張ろう」と切り替えることが大切です。
- 「周りに伝える」: 家族や親しい友人に「リビングではスマホを控えたいんだ」と伝えて協力をお願いするのも良い方法です。一緒に取り組んだり、応援してもらったりすることで、モチベーションを維持しやすくなります。
結び
デジタルとの付き合い方を見直すことは、決して孤立することではありません。むしろ、デジタルから少し距離を置くことで、目の前にいる大切な人との繋がりをより深く、心豊かに感じられるようになります。
リビングという身近な場所から、少しずつスマホとの距離を見直すこと。それは、あなたの時間を取り戻し、家族や友人との関係をさらに温かく、心満たされるものに変えていく、無理のない、そして価値ある一歩となるはずです。
完璧を目指す必要はありません。あなたにとって心地よいペースで、デジタルとの新しい関係を築いていくことを応援しております。