スマホから少し離れたら、地域で新しい「居場所」が見つかった話
スマホに囚われていませんか?「昔の自分」を取り戻すきっかけ
気がつけば、一日の多くの時間をスマートフォンを眺めて過ごしている。そんなご自分に、はっとした経験はございませんか。朝起きてから寝るまで、ついつい手に取ってしまう。SNSの通知、気になるニュース、友人からのメッセージ。それらに応えているうちに、あっという間に時間が過ぎ去り、「今日も何もできなかった」とため息をつく。
かつては、もっと近所の方と挨拶を交わしたり、地域の集まりに気軽に参加したり、趣味の集まりに出かけたりしていたのに。いつの頃からか、そうした実生活での人との関わりが億劫になり、スマホの中の繋がりに安らぎを見出すようになった、という方もいらっしゃるかもしれません。昔からの友人とも、直接顔を合わせて話すより、メッセージのやり取りで済ませることが増え、なんだか関係性が希薄になったように感じることもあるかもしれません。
「このままではいけない」と、デジタルデトックスを試みたものの、すぐに挫折してしまった経験をお持ちの方も少なくないでしょう。「スマホがないと落ち着かない」「情報の波から取り残されるのでは」といった不安から、結局元の生活に戻ってしまう。無理だと諦めてしまう気持ち、よく分かります。
しかし、もし、ほんの少しデジタルとの距離を見直すことで、失われつつあった実生活での温かい繋がりを取り戻したり、新しい「居場所」を見つけたりできるとしたら、いかがでしょうか。今回は、私が実際にデジタルデトックスを通じて体験した、心の変化と、それがもたらした新しい人間関係についてお話ししたいと思います。
大きな決意ではなく、小さな一歩から
私のデジタルデトックスは、決して「今日から一切スマホを見ない!」というような、気合の入ったものではありませんでした。過去に一度挫折していたこともあり、完璧を目指すのはやめようと心に決めていたからです。
きっかけは、本当に些細なことでした。ある日、寝る前にいつものようにスマホを見ていたら、目が冴えてしまい、なかなか寝付けなかったのです。翌日、ひどい寝不足で一日中だるさを感じ、「これはいけない」と思いました。そこで、「まずは、寝る前30分はスマホを見ない」という、小さなルールを作ってみたのです。
最初は、手が寂しく感じたり、何か見逃しているのではないかと不安になったりもしました。しかし、布団の中で静かに過ごす時間に慣れてくると、心が落ち着き、自然と眠りに入れるようになりました。たった30分ですが、この「何もしない時間」が、日中の忙しさで凝り固まった心を解きほぐしてくれたように感じたのです。
次に試したのは、「朝起きてすぐにスマホを見ない」ことでした。以前は、目が覚めるやいなやスマホに手を伸ばし、メールチェックやニュースの確認をしていました。これをやめて、まずはゆっくりお茶を淹れる時間を持つことにしました。すると、頭の中が情報でごちゃごちゃになる前に、静かに一日を始めることができるようになり、心に穏やかな余裕が生まれるのを感じました。
このように、私は「完全に断つ」のではなく、「〇〇する時はスマホを使わない」というように、特定の時間や状況でデジタルとの距離を置くことから始めました。無理なく続けられる小さな一歩が、私にとっての成功の鍵でした。
生まれた心の余裕が、行動を変える
寝る前や朝の時間にデジタルから離れる習慣がついてくると、それまでスマホに奪われていた時間や心の余裕が少しずつ生まれてきました。驚いたのは、たった30分や1時間といった短い時間でも、その質が変わるだけで、こんなにも気持ちに変化があるのかということです。
例えば、朝の余裕が生まれたことで、新聞にじっくり目を通したり、前日の回覧板を丁寧に読んだりする時間ができました。これまでは、回覧板もろくに読まずに次の家に回してしまうことも少なくありませんでした。しかし、ゆっくり読む時間を持つことで、地域のお知らせやイベント情報に目が留まるようになりました。
また、夕食後にスマホを触る時間を減らしたことで、家族と今日の出来事をゆっくり話し合う時間が増えました。それまでは、皆がそれぞれスマホを見ながら食事をしたり、食後すぐに自分の部屋に戻ったりすることが多かったのですが、食卓での会話が増えたことで、家族との間に温かい繋がりが戻ってきたように感じました。
心に余裕が生まれると、外の世界にも目が向くようになります。「そういえば、近所の〇〇さんが趣味で絵を描いているって言ってたな」とか、「この地域でこんな活動があるんだな」といった情報に自然と関心が向くようになりました。それまでは、自分の内側(スマホの中)にばかり意識が向いていたのが、外の世界へと視野が広がったのです。
地域での新しい出会いと「居場所」の発見
心に余裕が生まれ、地域へと意識が向くようになったことで、私に新しい変化が訪れました。
回覧板で、地域の清掃活動の募集を目にしたのがきっかけでした。以前なら「面倒だな」と思ってしまうようなことでしたが、あの時生まれた心の余裕が背中を押してくれたのです。「少しの時間だけなら」と思い、参加してみることにしました。
清掃活動の当日、最初は少し緊張しましたが、参加されている皆さんがとても気さくに話しかけてくださいました。「いつも回覧板を回してくれてありがとうね」「この辺りに住んで長いんですか?」など、温かい言葉をかけていただき、作業中も色々な話で盛り上がりました。スマホの中では得られない、 face-to-face での温かい交流がそこにはありました。終わる頃には、地域の一員として少しでも貢献できたこと、そして新しい方々と知り合えたことに、心地よい達成感を感じました。
また、別の機会には、以前から興味のあった地元の公民館での講座に参加してみることにしました。これも、スマホで無為に過ごす時間を少しでも減らして、何か新しいことを始めてみようと思ったのがきっかけです。講座には、私と同じように何かを学びたい、楽しみたいという方が集まっていました。共通の話題があるため会話も弾みやすく、次第に一緒にランチをしたり、講座のない日に集まって練習したりする仲間ができました。
こうした地域での活動や趣味を通じた新しい出会いは、私にとってかけがえのない「居場所」となりました。スマホの中の繋がりは、情報としては便利ですが、どこか表面的なものに感じられることがあります。しかし、実際に顔を合わせ、同じ場所で時間を共有することで生まれる繋がりは、より深く、温かいものです。困った時に助け合えたり、何気ないことで笑い合えたりする関係性は、心の支えとなります。デジタルとの距離を置くことで生まれた時間と心の余裕が、私にこうした温かい繋がりと新しい「居場所」をもたらしてくれたのです。
デジタルとの賢い付き合い方を見つける
もちろん、デジタルが全て悪いわけではありません。遠く離れた家族や友人と手軽に連絡を取ったり、必要な情報をすぐに手に入れたりできるのは、デジタルの大きな利点です。大切なのは、「デジタルに支配される」のではなく、「デジタルを賢く利用する」ことだと、これらの経験を通じて学びました。
完全にデジタルデトックスをするのは難しくても、例えば、
- 食事中はスマホを見ない
- 家族と話す時間はスマホを触らない
- 寝室にスマホを持ち込まない
- 必要のないアプリの通知はオフにする
- SNSを見る時間を一日〇分と決める
といったように、自分にとって無理のない範囲でルールを決めることから始めてみてはいかがでしょうか。一度に全てを変えようとせず、小さなルールを一つずつ試していくのが継続のコツです。
少しずつ、あなたの世界を広げてみましょう
デジタルデトックスは、単にスマホの使用時間を減らすことだけではありません。それは、自分自身の時間や心に余裕を取り戻し、実生活での人間関係や、地域との繋がりといった、目には見えにくいけれど大切なものを再発見するためのプロセスだと感じています。
もしあなたが今、スマホに時間を取られすぎていると感じていたり、人間関係が希薄になったと感じていたりするなら、無理のない範囲で、少しだけデジタルとの距離を見直してみてはいかがでしょうか。
生まれた時間や心の余裕が、きっとあなたの世界を広げ、温かい人間関係や新しい「居場所」へと導いてくれるはずです。あなたのペースで、少しずつ、豊かな現実世界を取り戻していきましょう。