「また失敗かも…」を乗り越え、スマホを手放す習慣で深まった友人関係
日々の暮らしの中で、気づけばスマートフォンを手にしている時間が長くなっていませんか。調べたいことがあるわけでもなく、誰かと連絡を取りたいわけでもないのに、ついつい画面を眺めてしまい、あっという間に時間が過ぎてしまう。そんな経験は、多くの方がお持ちかもしれません。
特に私たちのような年代になると、昔からの友人との連絡も、ついスマートフォン上のメッセージアプリで済ませてしまいがちです。手軽であることは便利なのですが、以前のように時間を気にせず直接会って話したり、ゆっくりと電話で声を聞いたりする機会は減ってしまったように感じます。画面越しのやり取りだけでは伝わらない、温度や表情といった大切なものが、少しずつ失われているような寂しさを感じることもあります。
私自身も、スマートフォンの使用時間が増え、やらなければならない家事や趣味に充てる時間が減っていることに気づき、漠然とした不満を感じていました。そして、友人との関係もどこか希薄になってきているように感じていたのです。そこで一度、スマートフォンとの距離を置く「デジタルデトックス」を試みたことがあります。しかし、意気込みすぎて急に全ての通知を切ったり、使用時間を厳しく制限したりした結果、かえってストレスが溜まり、すぐに挫折してしまいました。「私には無理だ」「やっぱりスマートフォンがないと落ち着かない」と諦めかけた経験があります。
なぜ前回のデジタルデトックスは続かなかったのか
以前、私がデジタルデトックスに失敗した理由はいくつかありました。まず、完璧を目指しすぎたことです。一切スマートフォンに触らない時間を作ろうとか、特定のアプリを完全にアンインストールしようとか、極端な目標を設定してしまいました。しかし、日々の生活の中で完全にデジタルから離れるのは難しく、少しでも触ってしまうと「もうダメだ」と全てを諦めてしまったのです。
また、具体的な行動計画がなかったことも原因でした。「スマートフォンを使いすぎない」という漠然とした目標だけでは、どのように行動すれば良いのか分かりませんでした。そして、なぜデジタルデトックスをしたいのか、その目的が「なんとなく」であったため、困難に直面したときに踏ん張ることができなかったのです。
挫折経験から見つけた「無理なく続ける」ための小さな一歩
一度は諦めたデジタルデトックスですが、友人との関係がこのまま希薄になってしまうのではないかという不安が募り、もう一度、今度は「無理なく、できる範囲で」試してみようと思い直しました。失敗経験から学んだのは、完璧を目指すのではなく、小さな一歩から始めること、そして具体的な行動を決めることの重要性です。
私が再開にあたって実践したのは、次のような「小さな工夫」です。
- 通知を必要最低限にする: メッセージアプリやSNSの通知は、緊急性の高いもの以外はオフにしました。通知が来るたびにスマートフォンを手に取ってしまう癖をなくすためです。
- 寝る前の1時間は触らない: ベッドに入る前にスマートフォンを触るのをやめました。代わりに本を読んだり、軽いストレッチをしたりする時間に充てました。
- 特定の時間帯は「スマホ休憩」を設定: 例えば、夕食の準備中や食事中はスマートフォンをキッチンカウンターに置いたままにすると決めました。家族との会話に集中するためです。
- スマートフォン置き場を決める: 帰宅したら、玄関の棚など特定の場所にスマートフォンを置くようにしました。部屋の中まで持ち歩かないようにすることで、無意識に手に取る回数を減らせました。
これらの工夫は、どれも「完璧にやめる」のではなく、「少しだけ」「特定の条件下で」という緩やかなルールです。初めは忘れてしまうこともありましたが、「まあいいか、また明日から」という気持ちで気楽に続けました。
小さな変化がもたらした友人関係への肯定的な影響
こうした小さな工夫を続けるうちに、少しずつですが、スマートフォンに費やす時間が減っていることを実感できるようになりました。そして、思わぬ形で、友人関係に良い影響が現れ始めたのです。
まず、スマートフォンを見る時間が減ったことで、心に余裕が生まれました。以前なら「〇〇さんからのメッセージに早く返信しなくちゃ」「SNSの投稿をチェックしなきゃ」と常に気になっていましたが、通知をオフにしたことで、そうした焦りや義務感から解放されたのです。
この心の余裕が、友人への連絡方法を見直すきっかけになりました。ある日、ふと「最近、あの人はどうしているかな」と思い立ち、メッセージアプリではなく、久しぶりに電話をかけてみました。以前なら、電話をするのは少し億劫に感じていましたが、スマートフォンを漫然と触る時間が減ったおかげで、電話をする時間も心の準備もできたのです。
久しぶりに電話で話した友人は、とても喜んでくれました。メッセージのやり取りだけでは分からなかった、声のトーンやちょっとした間の取り方から、彼女の近況や気持ちがより伝わってきました。短い時間でしたが、心温まる会話ができ、学生時代の話で大いに笑いました。
また別の機会には、共通の友人と「今度、久しぶりに会ってお茶でもしようか」という話になり、具体的な日時を決めて実際に会うことができました。以前なら、会う約束をしても「やっぱりメッセージで済ませようか」となってしまうこともありましたが、デジタルから少し距離を置くことで、実際に顔を見て話すことの大切さを改めて感じていたため、会う約束を強く意識できたのだと思います。
実際に会って話すと、オンラインでは気づけなかったお互いの変化に気づいたり、昔話に花が咲いたりして、あっという間に時間が過ぎました。画面越しのやり取りでは得られない、温かい繋がりを再確認することができました。
これらの経験を通じて、デジタルとの付き合い方を変えることが、実生活での人間関係をより豊かにすることに繋がるのだと実感しています。スマートフォンは便利なツールですが、それに時間を奪われすぎると、本当に大切にしたい人との繋がりや、目の前の現実を見落としてしまう可能性があることに気づかされました。
焦らず、ご自身のペースで
もし、以前デジタルデトックスに挑戦して挫折した経験がある方や、スマートフォンとの付き合い方を見直したいけれど、どうすれば良いか分からないと感じている方がいらっしゃいましたら、どうか完璧を目指さないでくださいとお伝えしたいです。
「少しだけ」意識を変えてみる。 「できることから」始めてみる。 そして、もし忘れてしまっても、「また明日からやればいい」と自分を責めないこと。
そうした緩やかなアプローチでも、続けることで必ず変化は現れます。スマートフォンの使用時間が少し減ったことで生まれた時間や心の余裕を、ぜひ大切な人との繋がりのために使ってみてください。それは、画面越しの「いいね」やメッセージだけでは得られない、深く温かい喜びをもたらしてくれるはずです。
デジタルとの健全な距離を見つける旅は、一度で成功するものではないかもしれません。しかし、小さな一歩を繰り返し、自分にとって心地よいペースを見つけることで、日々の生活はより豊かになり、大切な人との関係もさらに深まっていくでしょう。