「見るだけ」だったスマホを置いてみたら、隣にいる人との会話が弾んだ話
私たちは、スマートフォンを手に取る時間が、思っている以上に長くなっているかもしれません。ニュースを見たり、メッセージをチェックしたり、ふと気づくとかなりの時間が過ぎているという経験は、多くの方がお持ちなのではないでしょうか。
かつては友人や家族と顔を合わせて話す時間が当たり前だったのに、いつからかオンラインでのやり取りが中心になり、目の前にいる大切な人との会話がおろそかになっているような、そんな寂しさを感じている方もいらっしゃるかもしれません。デジタルデトックスを試みたものの、なかなか続かず、また元の生活に戻ってしまったというお話もよく耳にします。
しかし、デジタルとの付き合い方を見直すことは、決して難しいことではありません。そして、ほんの少しの意識の変化が、身近な人間関係に温かい変化をもたらすことがあるのです。今回は、私が実践した「小さな一歩」が、どのように日常の会話を豊かにし、人間関係を温かくしたかについてお話ししたいと思います。
スマホを「少し」置いてみた小さな実践
以前の私は、家にいる時間も、つい手元にあるスマートフォンを見てしまう癖がありました。食事中や、家族が隣にいるときでも、何か新しい情報が入ってきていないかと無意識のうちに画面をスクロールしていることがよくありました。
ある日、ふと「この時間、本当に必要なのだろうか」と立ち止まって考えてみました。そして、いきなり「スマホ断ち」のような大きな目標を立てるのではなく、ごく小さなことから始めてみようと決めました。
私が最初に取り組んだのは、「食事中はスマートフォンの電源を切るか、別の部屋に置く」という、とてもシンプルなルールでした。これは、デジタルデトックスに関する情報を調べているときに見つけた、比較的簡単で効果があると言われている方法の一つです。
最初の数日は、やはり手持ち無沙汰に感じたり、何か連絡が来ているのではないかと気になったりもしました。しかし、数日続けるうちに、目の前の食事に集中できるようになり、不思議と落ち着いた気持ちになれることに気づきました。
小さな一歩がもたらした、会話の温かい変化
この「食事中のスマホ置き」という小さな実践を続けるうちに、思いがけない変化が起こり始めました。それは、一緒に食事をしている家族との会話が増え、その質が変わってきたことです。
以前は、私がスマホを見ていると、家族もそれぞれの画面を見ているか、話しかけても上の空になってしまうことがありました。しかし、私が意識的にスマホをテーブルから遠ざけるようにすると、自然と家族もスマホから目を離すようになりました。
すると、それまで途切れがちだった会話が弾むようになったのです。その日にあった出来事や、テレビで流れているニュースについて、お互いの顔を見ながら話す時間が増えました。特別な話題でなくても、他愛ない話で一緒に笑ったり、「そうだったんだね」と相手の話に耳を傾けたりする時間が増えたのです。
これは、友人との外食の際にも同じことが言えました。「ちょっとスマホはバッグにしまっておこうか」と提案してみると、友人も快く応じてくれて、以前よりもじっくりと話をすることができました。オンラインでのメッセージのやり取りだけでは伝わらない、声のトーンや表情から伝わる相手の気持ちに気づくことができ、より心が通じ合う感覚を覚えました。
無理なく続けるためのヒント
私の体験から言えるのは、デジタルとの付き合い方を見直すことは、決して「スマホを完全に手放す」ことだけではない、ということです。
一度デジタルデトックスに挑戦してうまくいかなかったという方も、落ち込む必要はありません。完璧を目指すのではなく、「まずはこれだけ」という小さな目標から始めてみるのがおすすめです。
例えば、
- 朝起きてすぐにはスマホを見ない時間を5分作る
- 寝る前の1時間はスマホを触らない
- 特定のアプリを開かない時間帯を決める
- 移動中だけはスマホを見ない
など、自分の生活リズムに合わせて、無理なく続けられそうな「小さな一歩」を見つけてみてください。そして、それができた自分を褒めてあげることも大切です。
デジタルから少し距離を置くことで生まれる、ほんのわずかな心のゆとりや時間の隙間。そこに、身近な人との温かい会話が入り込む余地が生まれます。それは、オンライン上のたくさんの情報や繋がりとは異なる、深く満たされる感覚を与えてくれるはずです。
まとめ
スマートフォンは私たちの生活を便利にしてくれる素晴らしいツールですが、使い方次第では、大切な人間関係から私たちの意識を遠ざけてしまうこともあります。
デジタルとの健康的な距離感を見つけることは、一夜にしてできることではありませんし、完璧である必要もありません。失敗した経験があったとしても、今日からまた、あなたにとっての「小さな一歩」を見つけて、気軽に始めてみてください。
その小さな一歩が、目の前にいる人との温かい会話を取り戻し、あなたの日常と人間関係をより豊かなものにするきっかけとなることを願っています。